2011/08/16 ~4日目(最終日)~



高麗ホテルの朝食会場にて、他の日本人旅行者と別れの挨拶。



同志 < 忘れ物無いですか?そう簡単に取りに来れませんからね。
私  < オプスムニダ(無いです)。

私  <(小雨の中で長靴で歩く人達を見て)共和国ではファッションとして長靴が流行っていますか?(※DailyNKのニュースより
同志 < はっはっ、ただ雨が降っているから履いているだけですよ。



同志 残念ながら雨ですが、なごり雪ならぬ、なごり雨ですね?
本当に、色々日本語ご存じですね(笑)。
私が帰った後はお休みですか?
同志 夕方中国人の団体を迎えに行きます。
大変ですね・・・
同志 この時期はお客さん多いですからね。

同志 Mさんが"百戦百勝"とか色々とこちらに興味を持ってくれている事は、我々としても大変嬉しいです。
今度来られたら私がバッジを申請しますよ。(※国民がみんな付けているあのバッジ。大変光栄だが、使いどころが・・・。)
ありがとうございます。次はいつになるか分かりませんが、朝鮮語を勉強してきます。

(同志の手にあった大きな生傷を見て・・・)その傷は米帝と戦った時の傷ですか?
同志 はっはっ、違いますよ。出来物を手術した痕です。


空港に着き、まずドライバーさんとお別れ。
チップを渡し、「シンセルr チョッソヨ(お世話になりました)。」と告げると、「カムサハムニダ。」で返してくれた。
ガイドさん達と出国手続きを一緒にしてもらい、出発の飛行機の時間が迫っていたので、2人にもチップを渡してあわただしく別れを告げ、ゲートに入った。
荷物の検査が終わり、ふと入ってきたゲートを見ると、ガイド達がまだその場に居てこちらが手を振ると笑顔で手を振ってくれた。
最後の最後まで気を使ってくれた彼らに本当に感謝の気持ちで一杯になった。
日本人はこういう気遣いにとても弱い、と思う。

そして出国ゲートに並ぶが、ヨーロッパや中国人旅行客が他にもたくさんいたせいか、デジカメの写真チェックや細かい手荷物検査等は無くあっさり通過。
空港の中の小さな土産屋で最後のお土産として国旗バッジ70円x10個を購入し、雨に濡れながら飛行機に乗り込んだ。





雨で撮影できず。



機内食のハンバーガーひき肉とパン。味は悪くないが、包み紙に中国語が。朝鮮の名誉の為に書いておくが、朝10時くらいの便なので機内食はこのような軽い軽食となっている。食糧事情のせいでこのような軽食になったわけではなく、行きの昼の便ではしっかりした機内食が出てきた。

さようならチャングンニム!




------ 感想 ------

3泊4日北朝鮮に滞在したが、ガイド達は予想に反して意外に日本人の私に対して好意的だった。
私は徹底的に将軍様崇拝に徹して北朝鮮の国民気分になりきる事にしていたので、彼らが不機嫌になる事は一度も無かったし、極めて安全に
旅を楽しむ事ができた。そして意外にも食事が全部美味しかった。実は食料なんて困っていないという所を見せる為の将軍様の策略だったのか、
そもそも食料に困っているという報道自体が同志(男G)が言っていた米帝の扇動なのか、それは大都会平壌だけを見ては判断できないが、
少なくとも平壌、開城に関しては腹を空かせてうなだれているような死んだ目をした人は皆無だった。市民は素朴な感じで反日むき出しの危ない
感じも無く、皆日々を真面目に生きているという印象で勤勉さが感じられた。怠惰は罪なので監獄行きだからそうならざるを得ないのかもしれないが、
行き交う軍人や人々の様子を見て、例えるなら太平洋戦争が1945年から更に30年くらい続いた日本、という雰囲気だった。他に気付いた事は、
市民の中に肥満の人が誰一人いなかった。資本主義に毒されず、先軍革命を支える人民の規則正しい生活に不摂生など存在し得ないのだろう。
そして空気は澄んでいた。私はアレルギーでしょっちゅうくしゃみをしてしまう方だが、この旅では1回もそのような事は無かった。

ガイド達とも色々語り合ったが、日本は北朝鮮に対して謝罪していないという同志の意見は、一度韓国に日韓基本条約で賠償しているだけに、
確かに彼らにしてみれば不公平さを感じるのは無理も無い。国レベルで見れば植民地支配を謝罪していない無慈悲な犯罪国家日本に対して
拉致した人を返す道理も無いというのが彼らの言い分だろう。果たして拉致問題解決に向けて、国交を無くす事が本当に解決になるのだろうか。
小泉首相が拉致被害者を取り戻せた背景には、当時が最悪の食糧事情だった事も重なって交渉がうまくいったと思われるが、中国とロシアの
協力関係を強固にした今、あの時のようにただ援助をすれば拉致被害者を帰してくれるとは思えない。朝鮮総連からの送金をうまく止めたとしても、
先に述べた2国のバックアップであまり効果が期待できないかもしれないし、ますます敵愾心を燃やして態度を硬化するのは目に見えている。
北朝鮮崩壊を待てばおのずと被害者は返ってくるかもしれないが、崩壊しなかった場合には被害者は永遠に返って来ないし、アメリカと因縁のある
中国とロシアが後ろに控えているのでリビアと違ってそうそう攻められる事も無い。しかも北朝鮮はカダフィとは格が違う卓越した指導力で米帝とも
対等に渡り合う百戦百勝の鋼鉄の霊将、金正日同志
が控えているので攻め入るとなればベトナム戦争を遥かに超える犠牲を伴うだろう。
加えて、北朝鮮には石油程の魅力的な利権が無いのでそもそもアメリカが腰を上げない可能性もある。 なお、北朝鮮は2011/10/28に人権問題に
関して以下のような声明をアメリカに対して発表している。
「世界が、『人権擁護』の美名の下に主権国家の国権を無惨に踏み付けて、人民たちの生の基盤と尊厳を破壊する人権蹂躙の親玉・米国の
反人倫的犯罪を断罪している。米国は他人の「人権問題」に対して騷ぐ前に、自らをきれいにしたほうがよい。我々の自主権と尊厳を侵害しようと
する『人権外交』は対話と両立しない」

恐らく証拠が無いのにイラクを制圧したあの戦争の意義に触れていると思われるが、意外にも大日本帝国海軍の市丸少将が書いた「ルーズベルト
ニ与フル書」
を彷彿とさせるような正論であり、世界が指摘しにくい真実をこれだけ堂々と声を大にして言えるのはビンラディン、カダフィがこの世を
去った今、世界でただ一人、北の将軍様だけではないだろうか。まだまだ強気で意気盛んであり、核を手放すはずがない。潰されたイラクやリビア、
国際社会で発言が空気になっている日本、その日本に噛み付く韓国は北朝鮮の機嫌を伺い、アメリカですら一目置く所を見ると、大国と渡り合う
には強力な武力でもって対抗する先軍政治は、人民の犠牲さえなければそんなに間違いではないかもしれない。


平壌→北京の後、北京を飛び立つ。

ではどうすれば拉致被害者が帰って来るのか。
来年は金日成主席の生誕100周年で北朝鮮史上最高の祝賀ムードになる事は間違いないので、そこに向けてサプライズ恩赦を狙って交渉を
持ちかけるか、日本にとっては屈辱的であるが、韓国にした事と同じように、思い切って金丸信が金日成主席と約束した賠償金1兆円(※1)を
支払って全てを清算するか、即効性のある手段に関して今の私にはそのような事しか思い浮かばないが、何の見返りもない韓国に5兆円スワップを
ぽーんと確約するくらいならまだこちらの方が意義のある使い道な気がする。将軍様は本件に関して一度日本に詫びているが、韓国が日本の様々な
援助に対して感謝の意を表したり、譲歩した事は私が知る限り過去に一度も無い。北朝鮮はアメリカも手を焼く相手であるから日本も骨が折れるのは
必定で、背を向け合うのではなくお互いの誤解を解く努力をし続けない限り何も進展しないのは確かであり、北朝鮮が「強盛大国」を目指すのであれば
拉致という犯罪行為は大国にそぐわない事を時間がかかっても地道に分かってもらう外交努力をする必要がある。
また、日本国内の報道についてだが、旅で感じた事は、思い返してみれば北朝鮮に関する報道は大体が軍事、拉致、餓死、処刑、脱北のいずれかで、
良い報道はまったくないので日本国民が北朝鮮に対して、怖い所、危ない人達、というイメージを抱き(そう思っても仕方の無い部分もあるが)、北朝鮮を
考えるにあたって最初から話が通じない人達というイメージを抱き、思考停止せざるを得ない状況に陥らせているように思える。例えば最近ではアヒル
飼養工場や果樹農場を将軍様が現地指導して作業員を励ましたり、軍事以外にも国民生活の向上に向けて精力的に活動を行ってはいるが、メディアで
伝えられる事は無い。韓流も結構だが、拉致問題に関して国民の関心を薄れさせないように、少しづつ彼らの文化に関する報道も同時に流しても
良いように思う。

この旅で最も心に残ったのは、同志の「アメリカが最も恐れているのは、 朝鮮人民の一致団結の心です。」という言葉である。
同志は日本語ガイドなのに中国語、ロシア語も話せてなおかつ党員なので本来は日本の外務官僚?のような人だからこういう意見が言えたのかも
しれないが、全ては将軍様のため、国の為というナショナリズムは、良い方向に向けば国民一人一人が働く意義を見出し、国を支えているという
誇りを持って生きていける。ナショナリズムは今の日本ではサッカーワールドカップの時以外は希薄なものとなっているが、かつては日本も官民
一体となって国の為、天皇陛下の為に全てを捧げて国家の繁栄を目指した時期があった。その是非はともかく、何かを"信じる"という信仰の力は
恐るべきパワーを発揮する。それを恐れたアメリカが天皇を象徴として政治から外したのは周知の事実である。日米同盟が重要な事に変わりは
無いが、国際競争力を失い、政治も混迷を極め、何を信じていいか分からず働く意義が見出せない若者が増えた今の混沌とした日本において、
失われたこのナショナリズムこそが復活の鍵になる気がした。


23:30羽田着。お疲れ様でした。


国交が無いのでこの旅行をあまり他人に勧める事はできないが、渡航は自己責任にて判断して欲しい。外貨はユーロのみでOK、お土産は色々
持っていったがそれを旅行中に食べてはいないだろうから感想を聞けなかったが、タバコは喜ばれたので安く買える空港の免税店で買っていくと
良い。盗聴も有り得るので発言にさえ注意すれば護衛2人、運転主1人が付く超VIP待遇の極めて安全な旅行である。旅行者を拉致してもその後の
外貨獲得が止まってしまうだけなのでそのような被害に会う確率は少ないと思われる。向こうのテレビは軍の敷地に迷い込んだ鹿の親子を若い
軍人達が助けるドラマとか、革命の一代記?の熱いドラマとか、新しいドラマなのだが出演者が70年代の雰囲気でとにかく素朴で逆に新鮮だった
ので、韓流の流れで「北流」も意外に流行るかもしれないと思う今日この頃。彼らの考えの背景を知る上でそういう文化に触れる事は有意義では
ないだろうか。向こうの百貨店には日本製品が溢れていたし、将軍様は寿司や鰻が好きと聞く(※2)。何かのきっかけで日朝国交回復はそう遠く
ない気がしないでもない。余談だが、旅行中は金正日を将軍様と呼ばざるを得なかったので、旅が終わったにも関わらず金正日を呼び捨てに
する事に抵抗を感じるようになってしまった。しばらくあの緊張感のある旅の余韻に浸ろうと思う。


国交が回復して、北朝鮮産松茸と高麗ホテルで食べた極上アイスが輸入される日が来る事を切に願う。
記:2011/11/01


→2012年訪朝へ


※1 日朝「密室利権外交」小史(上)
※2 金正日の料理人―間近で見た独裁者の素顔 (扶桑社文庫) [文庫]


お土産。切手、音楽DVD、どんぐり焼酎、朝鮮人参飴、バッジ、煙草。飴はイマイチ・・・
北朝鮮のたばこ/タバコ 黎明と白頭山
たばこ。左:黎明(リョミョン)ニコチン1.2mg タール12mg、右:白頭山(ペクドゥサン) ニコチン1.2mg タール16mg。私は吸えないので知人に吸ってもらったが、白頭山は日本のHOPEのような味との事。



20ユーロのしっかりと作られた切手冊子。

首領様がいっぱい。










◆北朝鮮旅行リンク◆
ilsimdangyoel @ Great Asia
矢嶋武弘氏のページ
いなぽんの北朝鮮旅行記
北朝鮮に行ってしゃしんいろいろ撮ってきた。:ハムスター速報
中国人が書いた北朝鮮の旅行写真集
トリップウォーカー
beryu1氏のblog(海外)
外務省 北朝鮮に対する渡航情報